けれども、マジスパがスープカレーという言葉を用いるずっと前から、
今でいうスープカレーを提供していたお店がいくつかあるんです。
つまりマジスパがスープカレーという言葉を発明し話題になってはじめて、
「そういえば、あそこのカレーもスープカレーって言えるよね」
なんて具合にジャンル統合されていった、スープカレー先史時代のパイオニアたち。
マジスパのルーツがインドネシアのソトアヤムなのに対し、
それらの店のカレーのルーツはインドだったり、スリランカだったり。
スリランカルーツの「スープカレー」の元祖といわれるのは1978年創業の『ポレポレ』。
そしてインドルーツの「薬膳スープカレー」の元祖にして、最古のスープカレー店といわれるのが、1971年創業のこちら。

『アジャンタ インドカリ店』
当初は喫茶店としてオープンしたこのお店、店主の辰尻さんがインドで出会ったスパイス料理と漢方を融合した独自の「薬膳カリィ」を提供し始めたところ評判に。
1975年ごろ常連さんのアドバイスもあって出汁用の鶏レッグを具材としても用い、今の形に。
看板を『薬膳カリィ本舗アジャンタ』に変えたのもこの頃のようです。
現在「札幌スープカレー」と呼ばれる各店の提供スタイルの基本がすでにあったということ。
スープカレーというジャンルはまだなかったものの、『ポレポレ』も『マジックスパイス』も他の老舗店も、
きっと『アジャンタ』の影響を少なからず受けたのではないでしょうか。
2001年頃、店主ご夫妻は離婚され、『アジャンタ』の暖簾は妻の南美智子さんが受け継ぎ、夫の辰尻宗男さんは弟子を連れ別の場所で『アジャンタ総本家』を開業します。
これが現在札幌に2系統の『アジャンタ』がある理由。
どちらが正統?どちらが本流?みたいな話は常にあって、それぞれの言い分があるので意見統一は難しいところ。
元の看板を継いでいる『アジャンタ インドカリ店』が本流という意見もあれば、
元の店長が立ち上げた『アジャンタ総本家』が本流という意見もある。
そもそもご夫婦で一緒に作り上げたカレーなのだから、どちらも本流という意見もある。
ちなみに私の著書『ジャパニーズカレーカルチャーガイド』では、
歴史的にスープカレー最古の看板を継ぐ『アジャンタ インドカリ店』のほうを採りあげています。
20年近く前こちらの店を訪れたとき南美智子さんにとても良くしていただいた、その恩返しの気持ちもあります。
辰尻宗男さんは2009年に亡くなられ、『アジャンタ総本家』は現在お弟子さんが継承。
一方の『アジャンタ インドカリ店』は2017年に現在の中央区南29条西に移転。
2021年まで美智子ママが厨房に立っていましたが、2022年1月に新店長へとバトンタッチしました。
2021年7月には伊豆長岡にも進出。
また、札幌市南区にある同名の『アジャンタ インドカリ店』は2011年に『アジャンタ インドカリ店』から暖簾分けしたお店です。
さて、前置きが長くなってしまいました。
こちら最古のスープカレーの看板を受け継ぐ『アジャンタ インドカリ店』

立派なレストラン然とした『アジャンタ総本家』とは対照的に、今もアットホームな喫茶店の佇まいを残しています。

メニューは
・とりカリ
・やさいカリ
・とりやさいカリ
・らむカリ
・らむ筋カリ(時々)
・はーぶカリ(お子様専用)
・かしみぃるカリ(日曜限定)
けれど最初に食べておきたいのは、札幌スープカレーの源流となったこちらでしょう。

★とりカリ ¥1200
1975年頃完成したとされる、最古のスープカレー。
液面のテカリが印象的ですが、これこそ『アジャンタ』の味の決め手のマサラオイルなんです。

オイリーだけど、油っこくない。
矛盾するようだけど、そうなのです。
インドのスパイスと漢方を融合した、ちょっぴり苦くて香ばしい、どこにもない『アジャンタ』の味。
たっぷりのチキンも、野菜も、シンプルだけど飽きの来ない美味しさ。
長く続く定番には、長く続く定番ならではの求心力が感じられます。
20年近く前にいただいた時と比べても、味は見事にそのまんま。
ただしデフォルトの辛さは抑えめになっています。
より幅広い層に食べてもらうためのままのチューニングではないでしょうか。
辛さが欲しい人には辛さ追加も可能になっていますよ。
帰り際、瓶詰のマサラオイルを土産に購入。
カレーにも、パスタにも、うどんにも、これを加えると『アジャンタ』の味っぽくなるという逸品。
手作りで、もちろんお店でしか買えません。
歴史あるお店に伺うと、神社仏閣へ詣でたときのような清々しい気分になります。
そして、背筋が伸びる思い。
いいものです。
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