ここには日本カレー界の知られざる天竺があるのです。
※ここまでの流れはこちらを参照。
「2010年カレーの天竺への旅。」
http://ameblo.jp/ropefish/entry-10425226266.html
山頂の展望台、その二階にあるレストラン「おらが茶屋」


「独特のカレー」「濃いコーヒー」
この2つの言葉にはとても深く、とても重要な意味があるのです。
・・・時は遡り、1980年代。
港町神戸、新長田駅前商店街にとても美味しいカレーを出す店がありました。
その店の名は「印度屋本店」
店の謳い文句は「独特のカレーと 濃いコーヒー」。
ちょうど某高校の通学路でもある場所柄、
そのあまりに美味しいカレーとコーヒーに魅せられ、とりこになった学生が何人いたことか。
この私もその一人でした。
毎週毎週通い、サービスポイントを貯め・・・
このお店は私の「行きつけの店」第一号になりました。
店はおばさんが一人で切り盛りしていたのですが、
何せ古い商店街、しかも長屋作りの店。
私が食事をしているときにも何度か、
「土地を明け渡してくれ」というような交渉をしに来る人を見かけたことがありました。
それでもおばさんは変わらず、美味しいカレーとコーヒーを出し続けていたのです。
その後、私は地方の大学へと進み、その後東京に就職。
多忙な仕事ゆえ、神戸に帰りこの店を訪れることもなく、時は流れてゆきました。
・・・そしてその日がやってきたのです。
1995年1月17日。
阪神・淡路大震災。
東京でニュースを知った私は一週間後、神戸へと戻り、思い出の新長田の地を訪ねました。
しかし、そこに広がっていたのはただ、焼け野原。
商店街は跡形もなく消え、ただ真っ黒に焼けた木と、瓦礫が地面に転がっているだけ。
この印度屋本店も、看板の端が少し確認できるほかは何も残っていない状態になっていたのです。
・・・それから私は、東京でカレーの食べ歩きを始めました。
何百というカレー屋をめぐり、
カレーという食文化の広さ、奥深さについて、次々に新しい体験をしてきました。
・・・しかし、私が始めてカレーに目覚めたあの「印度屋本店」の味だけは、どこにもなかったのです。
私はカレーを食べたあと、必ずコーヒーを頼みます。
「世界で一番美味しいコーヒーは、カレーを食べた後のコーヒーだ。」
が私の持論です。
もちろん、「印度屋本店」でカレーを食べたあと飲んだ、
「濃いコーヒー」の味がめちゃくちゃ美味しくて忘れられないからに他ありません。
・・・そんなある日、ネットで「印度屋本店」の行方を探していたところ、
見つけたのです。
この「おらが茶屋」を。
そして、「独特のカレー」と「濃いコーヒー」という謳い文句を。
・・・絶対、行かなければ。
しかし、山の上というロケーションに加え、
土・日の朝6:00~15:00までという限られた営業時間(カレーは11:00~)制限もあり、
また、ぶらっと行ってちゃらっと食べるのではなく、
きちんと特別な日に食べようという思いもあって、
いままで一度も訪れず仕舞いだったのでした。
・・・そして今、ついにその「おらが茶屋」へ。

年末、事前に営業確認の電話を入れたところ、
なんと1月1日元旦の朝6時から営業しているとのこと。
凄い気合です。
二階に上がると、テーブル7席の落ち着いた雰囲気の店内が。

そしてやはり、あの、
新長田で「印度屋本店」を切り盛りしていたおばさんが、
20年以上の時を経てもまったく変わらず注文を聞きに来てくれたのです。
東京から正月にあわせて来たこと、
なんとか東京で頑張ってやっていること、
おばさんのカレーがきっかけで今もカレーを食べ歩いていることなどを告げると、
おばさんは本当に喜んでくださいました。
新長田時代のお客さんたちが、今も頑張っているのを見るのが嬉しいと。
やはり私と同じように、昔の常連さんが訪ねてくることもあるようで、
新長田時代は本当に大変だったけれども、
本当に幸せな経験だったとともに、
あの頃鍛えられた経験があるからこそ、
多少のことがあっても乗り越えられる気力が身についたのだとも。
そんなおばさんが昔と変わらず作ってくれたカレーがこちら。

独特カレー ¥750
ドーナツ状に盛られたスパイス感たっぷりのドライカレーにカレールーをかけ、
真ん中の穴に生卵を落とした独特のスタイル。
「印度屋本店」ではこの独特カレーと、
もう一つ辛さが選べる通常のカレーライスがメニューにあったのですが、
この日のメニューにはありませんでした。
なお、写真をとる前に思わず一口食べてしまったので、
生卵が崩れていますが、そこはご愛嬌で。

・・・味は昔と変わっていません。
見事です。
東京中を食べ歩き、しかしどこにもなかった味。
家庭的でありながら、家庭では作れない味。
その味に再び出会うことができました。
しかも、山の頂上で。
口の中に独特のスパイス感が広がります。
その余韻を残したまま、
こちらをいただきます。

昔ながらのコーヒー ¥350(カレーとセットで¥900)
スパイスの残り香と濃いコーヒーの香りが混じり、口の中に広がります。
これこそ、私がかつて魅了された最高のコンビネーション。
カレーを食べ終わってからも、おばさんとの楽しい会話は続きました。
震災の頃のお話、
この茶屋に移った頃のお話、
カレーライスを再び出すに至った話・・・
最後に一緒に記念写真を撮らせていただき、
さらに素敵なサービスをいただいた後、
再訪を約束して店をあとに。
店の上には展望台。
驚くべきことに、360度神戸の全景が見渡せる最高のロケーション。

舞子・淡路方面。

須磨側に続く尾根。

三宮、大阪方面。
すこし空気がもやっているのは大陸からやってきた、
季節はずれの黄砂なのだそう。
しかし、ここまでの絶景は、神戸でも指折り。
新長田の古い商店街にあった「印度屋本店」は今、最高の一等地へ。
私のカレーの原点は、名実ともにカレーの頂上になっていたのです。
2010年の始まり。
不況など、暗い話題が蔓延する世の中ですが、
そんな小さいことをすべて吹き飛ばしてくれる、
最高のカレー初めでスタートを切ることができたようです。

おらが茶屋
兵庫県神戸市須磨区西須磨寺公園立原谷1-1
電話:090-8192-3793
交通手段 神戸市バス75系統 高倉台1丁目下車徒歩10分~20分
営業時間 [土・日・祝のみ]6:00~15:00
(カレーは通常11:00~ 限定20食)
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おらが茶屋 (定食・食堂 / 山陽須磨、須磨寺、須磨)
★★★★★ 5.0
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