「Japanese Curry Awards2015」
いよいよ受賞店発表!

今年は関東・関西計14名の選考委員が参加。
各委員がノミネートした日本全国のカレー店は、メインアワード計109店、新人賞候補8店、名誉賞候補8店。
●ノミネート各店のリストはこちら
⇒『「Japanese Curry Awards 2015」全ノミネート店一挙 公開! 【受賞店発表は12/24】』
●「カレー細胞」ノミネート店はこちら
⇒『今年で第2回!! 【全文掲載】 Japanese Curry Awards 2015 ノミネート店選出! カレー細胞セレクト』
その中からアワード店を選出すべく2015年12月17日、昨年名誉賞を受賞した「デリー」(銀座店)に選考委員が集合。
喧々諤々の議論の末、ついに受賞店が決定しました。
それでは、「Japanese Curry Awards2015」受賞店の発表です!
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★★★★★★★★★メインアワード(10店)★★★★★★★★★
●カルータラ(大阪)

-関西カレーを牽引してきた「アニキ」的存在-
今や空前のスリランカ料理ブームとなった大阪。
そのはるか前からスリランカ料理一本で拘りぬいてきたパイオニア。
大阪のスパイスカレーの基本とも言える「合いがけ」スタイルを、創業当初から続けていることも重要ポイント。
レジェンド「カシミール」とはまた別の意味において、
大阪のスリランカ料理、スパイスカレーの両面における「アニキ」的存在と言えるのではないでしょうか。
昨年アワードを受賞した「カラピンチャ」の濱田さんも、開業にあたりこちらの横田マスターの手引きでスリランカ修行へと赴いた。
その多方面にわたる貢献度は計り知れません。
●バンブルビー(大阪)

-唯一無二。大阪カレー界孤高のカリスマ-
大阪スパイスカレーというジャンルが誕生したきっかけは、「何じゃこりゃ?」の迫力だったのではないかと思います。
元祖とされる北浜「カシミール」(「ルーデリー」という説もありますが)の「何じゃこりゃ?」の迫力に、やっちゃっていいんだ!と刺激され、冒険と挑戦を始める店が出てきたのがシーンのはじまりだとすると、今は「スパイスカレー」というジャンルがちゃんと確立している。それには良い面とそうでない面があって、ジャンルに嵌めようとする保守的感覚が勝ってくる場合もあると思うのです。
そんな中、孤高のレジェンドとでも呼ぶべき店がこちら「バンブルビー」。
三種の獣肉を花で飾った「ジビエ三兄弟」と称する異色の一皿、そのズシッとヘヴィなスパイスと辛さ・・・誰も真似できない、真似しようとも思わない、行き切った存在感は超絶。
カレーを進化させるのは、「なんじゃこりゃ?」の刺激。その孤高の迫力に敬意を。
※カレー細胞ノミネート店です。
●和レー屋 ゴヤクラ(大阪)

-カレーの刺激と和食を融合させた「和レー」の開拓者-
「和レー」という新しいカテゴリーのカレーを生み出したパイオニア。
師弟関係にある「丁子」「スホベイ」にも甚大な影響を与え続けており、昨今のスパイスカレーが盛り上がってる潮流にはほぼ無関心で無関係といったスタンスで、独自のカレーを探求し続けています。
ここでしか味わえない数々のカレーは、必ず記憶に残りなんかのきっかけで無性に食べたくなる、どれも中毒性が高いもの。
「これはカレーじゃない」という客の批評に対して「うちはカレー屋じゃないんですわ。和レーて書いてあるでしょ。ただのぶっかけ飯屋です。」と言い切ったという伝説に、その心意気と拘りが凝縮。
●奥芝商店(北海道・東京)

-地産地消料理としてのスープカレーへ果敢に取り組む-
その土地の文化と融合し生み出された独自のカレーを語るとき、北海道のスープカレー文化は欠かせません。
元々スリランカ、インド、インドネシアなど別個のスパイス料理文化を取り入れた様々なカレーが「スープカレー」という名のもと、一つのジャンルとなり、カルチャーとなったその流れは、現在の「大阪スパイスカレー」にも通ずるものがあります。
スープカレーの名店数多ある中、特にこの「奥芝商店」が素晴らしいのは、北海道の店舗では北海道の食材を、八王子の店舗では八王子の食材をと、地産地消にこだわっているところ。
日本で生まれたスープカレーという料理を、その土地土地に定着したカタチで提供することに、高い意識をもって取り組んでいる姿勢を評価。
※カレー細胞ノミネート店です。
●まめ蔵(東京)

-カフェカレー文化の開拓者-
1978年にオープンして以来、「カレーを目当てにカフェに行く」という、カフェカレーのシーンを開拓。
各地に「まめ蔵系」と呼ばれるカレーの名店たちを生み出した、まさに「大御所」です。
サブカル盛んな「中央線文化」を代表するカレー店としても重要。
●東京東洋軒(東京)
-洋食カレーの極み、次世代への進化-
創業1928年、日本の洋食史が「東洋軒」の歴史。
本店が三重県へと移ったのち、東京・赤坂へと支店をオープン。
「ナリサワ」の成澤シェフが監修に入り、フレンチと和を繊細に融合させた次世代洋食としての視点が加わりました。
まさに伝統と革新。
レベルの高い西洋料理の数々とともにいただく伝統的な黒カリーは、インドから西洋にわたった「カリー」がいかにして日本に花開き、進化していくのかを教えてくれます。
●ニルワナム(東京)

-東京シティライフに溶け込んだ、南インド料理の洗練-
昨年の「エリックサウス」に続き、東京の南インド料理店が受賞。
ニッポン庶民の生活導線の中へそっと南インド料理を忍び込ませた「エリックサウス」(それと「エリックカレー&ビリヤニ」)に比べ、
「ニルワナム」はまさにシティライフというか、アーバンライフというか、その中で南インド料理を輝かせた立役者。
東京オリンピックに向け再開発が期待される(のに未だ不毛の地である)有明に支店を出したり、
ここから独立したシェフが新たな名店「ナンディニ」を立ち上げたりと、
今年また(何度目かの)盛り上がりを見せた東京南インド料理ブームにも多大な貢献。
●カッチャルバッチャル(東京)

-「スパイスバー&居酒屋」ムーブメントの火付け役-
昨年、私がノミネートさせていただいたお店。
飲めるカレー屋「スパイスバー&居酒屋」というムーブメントを作り出し、
カレー屋のあり方に大きなターニングポイントをもたらした点で、日本カレー文化に貢献。
「カマルプール」「ディルセ」「猫六」「オフビート」「ヒマラヤテーブル」・・・
次々に登場する「スパイスバー&居酒屋」は一過性のブームを越えて、
ひとつのジャンルを築き上げ、外食カレーの可能性を一気に拡大させつつあります。
また、以前より「タンドーリの名手」として鳴らした田村さんの手によるインド料理は、群を抜いたクオリティ。
日本インド料理のヌーベルバーグ、その旗手として時代を牽引しています。
※カレー細胞昨年度ノミネート店です。
●スパイスツリー(神奈川)

-各国スパイス料理、いいとこミックスの新境地-
昨年彗星のように現れ、新人賞候補に挙げさせていただいたお店。
すでに名店です。
「カレー屋」であり、「南インド料理店」であり、でもネパール要素も入ってたり。
その「いいとこミックス感」こそが、ジャパニーズカレーが進む一つの方向性。
関西のスパイスカレーでも同様の傾向が見られますが、この店は味もトップクラスと感じます。
店主は昨年の栄誉賞「デリー」出身でありながらも、カシミールカレーを封印。
南アジアのスパイス料理と日本カレーの融合という「デリー」のスピリットを受け継ぎつつも、独自の挑戦を続ける姿勢を応援。
※カレー細胞ノミネート店です。
●サワディシンチャオ(大阪)
-「たべる」と「つくる」の両面で、多様なカレー文化を紹介-
料理研究家でアジアンクッキングサロンも主宰するのおぐしみきさんがオーナー。
ベトナム、タイなど東南アジア料理を中心に本場の味を追求、ビギナーからマニアまで魅了してくれます。
名物はタイハーブを存分に使用した手間のかかる自家製ペーストを使用したグリーンカレー(ゲーン・キヨワーン)で、
既製品のペーストを使用して、やたら白っぽく粘度の高いグリーンカレーを供する店が多い中、ゲーン・キヨワーンとは、
本来どういうモノかということを教えてくれる。
関西においていち早くマッサマンカレーをメニュー化し紹介したという貢献も見逃せません。
以上がメインアワード10店。
★★★★★★★★★新人賞★★★★★★★★★
新人賞は今年、関東・関西からそれぞれ計2店が選出されました。
どちらも素晴らしい可能性を秘めたお店です。
新人賞
●ダルバート食堂(大阪)

-ネパールの本気の味を、カレー屋として広める。-
ネパールの定食である「ダルバート」を、マニアックな異国料理店としてではなく、
あたかもスパイスカレー店であるかのようにプレゼンテーション。
マニアでない人たちにも広めることに成功しつつあるお店。
出店場所がまさに大阪スパイスカレーの激熱エリア・裏谷四であることにも、その狙いがはっきり見てとれます。
しかし、実は調理方法やスパイス使いなどは本場ネパールそのものであり、ディープマニアも満足できるというのがミソ。
昨年アワード受賞店の「カラピンチャ」とも親交が深く、本気の異国料理を、間借り営業を経た緻密なマーケティングによって、
入りやすく居心地よい「カレー店」へと昇華させたその流れは「カラピンチャ」、そして「ゼロワンカレー」と同じ系譜といえるでしょう。
これらのお店は今後、関西カレー界の未来を担うキーパーソンとなっていくはず。
金曜夜の、「ネパールのスパイス料理で飲める」居酒屋スタイルでの営業にも注目!
新人賞
●ハブモアカレー(東京)

-日本人が毎日食べたくなる、スパイスおばんざいの新境地-
シェフの松崎さんは2015年、新宿「curry草枕」の厨房で働きつつ、水曜限定の間借りで「ハブモアカレー」をスタート。
インド料理を基軸としながらも、まるで「京のおばんざい」であるかのように、季節の美味しい、
そして珍しい食材を愉しむ独特のカレープレートを提供しはじめました。
その独特のカレーは瞬く間にネット上でも評判となり、半年も経たないうちになんと、表参道に実店舗をオープン。
「カレーは和食」を独自解釈で追求、貫き続ける姿勢を応援すべく、本年度の新人賞に選出!
※カレー細胞(メインアワード)ノミネート店です。
★★★★★★★★★名誉賞★★★★★★★★★
名誉賞
●新宿中村屋 Manna(東京)

-「日本初」が「日本最古」に挑戦する、飽くなき探究心-
創業1901年。言わずと知れた、日本で初めて「印度式カレー」を提供したお店です。
それだけでも、完全に名誉賞以外の何者でもないのですが、今年このお店が選出されたのにはもう一つ理由があります。
今から143年前、1872年(明治5年)同じ年に刊行された『西洋料理指南』『西洋料理通』2つの書物に「日本最古のカレーレシピ」が登場するのですが、そのうち『西洋料理通』のカレーレシピを、「新宿中村屋」が期間限定で再現したのです。
まだ玉ねぎが普及していなかった時代の、長ネギを使ったカレー。これを出せるのは「新宿中村屋」をおいて他にない。
創業100年を越え、今も日本のカレー文化を啓蒙し続けるその姿勢に敬意を。
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各選考委員の独自の視点、切り口によるアワード13店。
その基準は大きく分けて2つあり、
一つは、日本カレー文化を推進してきたこれまでの実績・功績に対するもの。
一つは、日本カレー文化の新たな可能性を切り拓く、挑戦に対するもの。
選考会で議論となったのは、そのどちらを優先するか、ということでした。
ここから先は、私個人の見解となるのですが、
「アワードに値する店を選ぶ」のはもちろんのこと、それだけではだめで、
「アワードに選ぶことに意味がある店」を選ぼうと。
つまり、誰もが納得する理由がある店だけを選ぶのであれば、何も我々が選ぶ必要はない。
知識と、二次情報の収集能力さえあれば、だれだって選考できてしまう。それでは意味がない。
むしろ、知識だけではわからない日本カレーの魅力や可能性を、
アワード授賞という手段を通じて発信していくことに意味があると思うのです。
そういう意味では、今回のアワード受賞各店は、過去の実績に重きを置いたものと
、現在の挑戦に重きを置いたものの両方がバランス良く入っており、
しかも「選ぶことに意味がある」お店が揃ったのではないかと思っています。
アワード受賞しても「ま、そうだよね~」で済まされてしまうお店でなく、
「へぇ!この店が獲ったんだ。」ってみんなが興味を惹いてくれる、そしてそこから何かが動く、
そんなお店たちが選ばれたのではないかと。
・・・が、一方では、個人的に悔やまれる点がないわけではありません。
ビジネスとして成立するのか、しないのか、未知数が故に誰も挑戦しなかった試みに果敢に挑戦する各店、
「カルパシ」「ココペリカレー」「KALA」「チャイハナ開花」へと、賞を届けられなかったこと。
大都市中心、既存の流通ネットワークの中で行き詰まりをみせる日本経済と、暮らしの豊かさを根本から見直す。
ルールを破るリスクと向き合いながらも、カレーへの情熱を武器に、ローカリゼーション故のグローバリゼーションへとアナログな闘いを続けるお店たち。
多分、日本の経済と外食文化を、「豊かなほう」へと変えていくのは彼らのような取り組みなんだと思います。
そして、あまりにアナログな闘いゆえ、華やかな光が当たりにくいそのような店へアワードというスポットライトを当てることで、
賛同者が増え、何かが変わる、そう思っていたのです。
そして、それは知識と二次情報に頼っているメディア関係者たちには、「できっこない」ことだと思っていたからです。
だがしかし、悲観することはありません。
2015年の今、そのようなお店がノミネートされた記録は残りました。
その事実を少しでも多くの人に知ってもらうこと、そして1年後、2年後、再評価してもらうこと。
これだけでも意味があったのではと思います。
(「カルパシ」と「ココペリカレー」は現在間借り営業ということもあり、今後に期待です)
おそらく、私以外の13人の選考委員の方々も、自らノミネートし受賞を逃したお店たちに対しては、それぞれの想いがあるはず。
我々選考委員側も、こうして想いをぶつけ合う、その過程にこそ意義があるのですよね。
「Japanese Curry Awards」は来年も続きます。
「日本のカレー文化」とは、いったい何なのか?どっちへと向かうのか?
議論は続きます。
そのことが、大切です。
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