ノコギリザメとノコギリエイの違いって分かりますか?
どちらも吻部がノコギリ状に進化した独特なカタチで、一見とても似通っているのですが、そこはサメとエイ。
ノコギリザメは鰓が体の側面に、ノコギリエイは体の下についているんです。
今日は意外に知られていない、ノコギリエイの生態についてご紹介しましょう。
こちたは上海海洋水族館で飼育されている個体。
ノコギリエイ(ラージトゥース・ソーフィッシュ)
学名:Pristis microdon
英名:Largetooth sawfish,Freshwater Sawfish
最大長:7m
原産地:インド洋から太平洋の熱帯・亜熱帯域Pristis microdonは最大7mにもなるノコギリエイの最大種で、日本にも分布しています。
・・・が、夜行性で、泥や砂で濁った場所に好んで住んでいるため、目撃することは稀。
生態の研究もあまり進んでおらず、広範囲に生息するものの個体数は減少している様子。
最大の特徴であるノコギリのギザギザは厳密には牙ではなく、鱗が発達したもの。
長く伸びた吻部には、エイ・サメ類に特有の
ロレンチニ瓶と呼ばれる電気受容器があります。
他のサメやエイではこのロレンチニ瓶という器官は鼻先の下部についており、獲物を探索するのに役立つわけですが、
このノコギリエイの場合、ロレンチニ瓶が上部についているのが珍しいところ。
遊泳しながら餌を探すのではなく、ノコギリ状の吻部を泥の中に突き刺し、かき回して餌を探す習性上、
レーダーは上部にあったほうがより効率的、ということでしょうか。
そしてこのノコギリ、ただ獲物を探すショベルの役割だけでなく、大方の期待通り(笑)武器としても強力。
振り回し、獲物を傷つけ気絶させて捕食するというだけでなく、敵に襲われたときに身を守る役目も。
実際その「刃物」としての切れ味もなかなか凄いようでなんと・・・
小魚を真っ二つに切断することもあるのだとか!!「そうだったら凄いな」を実現してしまう漢気に拍手ですね。
そしてこのノコギリエイ、もう一つ特筆すべき点が・・・
実は上海の水族館で解説パネルを見たとき、「ん?えぇっ!?」と思ったのですが・・・
Freshwater Sawfish??え?こいつ淡水魚なの???実はこのノコギリエイ、淡水・海水の両方に適応できる浸透圧調節能力があるらしく、汽水域によく侵入するばかりか、
淡水域での繁殖例も報告されているとのこと!!
・・・いやいやちょっと待ってください。
確かにエイの仲間には淡水に棲むものがいますよ。
南米のモトロしかり、ポルカドットスティングレイしかり。
なかでも南米のアハイア・グランディ Potamotrygon brachyuraは2m超え、タイのヒマンチュラ・チャオプラヤ Himantura chaophrayaに至っては4mほどになるという説も。
しかし・・・
このノコギリエイは7mですよ、7m。淡水魚としてはピラルク(5m)、メコンオオナマズ(3m)、ヨーロッパオオナマズ(3m)、パーカーホ(3m)、アリゲーターガー(3m)を優に超え、淡水域に生息する魚として世界最大のオオチョウザメ(6~8m)に匹敵する巨大さ。
なんなら、世界最大クラスの淡水魚といえなくもない!!そんな豪快で魅力的なノコギリエイですが、フカヒレ漁などのターゲットにもなり個体数は減少。
エイだからエイヒレだっちゅうに!なんてクレームはフカヒレマフィアには通用せずのようで。
(台湾フカヒレマフィアの黒い活動は、ドキュメンタリー映画
「SHARK WATER」をご覧ください)
もう、見た目からして危険動物なノコギリエイですから、かわいいイルカのような保護活動は期待できませんよね・・・
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ラブカ学名:Chlamydoselachus anguineus
英名:Frilled shark
最大長:2m
原産地:世界各地の海 水深600m付近
深海に生息する古代ザメの生き残り。
随所に現生の他のサメとは異なる原始的な特徴を備えており「生きている化石」と呼ばれています。
まずその頭部。
普通のサメは鼻が前方に突出し、口はその下に付いています。
獲物を探す嗅覚を増すための進化です。
しかしこのラブカの場合、口はほぼ最前面。
これは化石でのみ知られる古代ザメ、クラドセラケなどと共通する特徴です。
次にエラ。
通常のサメには左右に各五個の穴。
しかしこのラブカは左右各六個あります。

鰓裂間の膜は大きくヒダ状で、
フリルのように見えることが英名フリルドシャークの由来とされます。
そして歯。

フォークのように三又となった独特の形をしています。
下の映像は2007年1月に「あわしまマリンパーク」のスタッフによって捕獲された時に撮影された貴重な映像。
生きた状態が撮影されるのは非常に稀で、この映像は世界各地にニュースとして報道されました。
見るからに醜怪なその姿・・・
しかし冷静に考えてみるとこのラブカ、深海から引き上げられて弱っているはずですから、
「生きた姿」というより「瀕死の姿」といったほうが正解かも。
実際このラブカは捕獲後数時間で死亡したそうです・・・合掌。
かの有名なシーラカンスが生き延びたのも深海。
世界の海にはまだまだ、絶滅したと思われていた生物が息を潜めて生き延びている…それは間違いないことなのでしょうね。
(今回の特別展では剥製による展示になります。)
◆→『深海生物特集』全14回目次◆サンシャイン国際水族館
Deep Sea~深海の不思議な生きものたち~
09/03/20~09/05/10
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角のように尖った頭部、そしてその下に突き出た牙剥き出しの口…
英名でゴブリンシャーク(鬼ザメ)と呼ばれる通りの奇怪な形相をしたサメ、
それがこのミツクリザメです。
ミツクリザメ学名:Mitsukurina owstoni
英名:Goblin shark
最大長:3~5m
原産地:水深1200m以深の深海(主に日本近海)
図鑑などでもおなじみのこの奇怪なルックス、
でも普段はこんな顔じゃないんです。
…え?どういう事?
じつはこのミツクリザメ、普段は普通のサメのような顔。
それが敵や獲物を見つけるとみるみる顔が変化するんです!
口が飛び出し、牙が前方に突き出してまさに鬼の形相に早変わり!
↓かなりショッキングですよ…
大魔神か、エヴァの暴走か、ってな感じ。
ちなみに映画「ガメラ対深海怪獣ジグラ」に登場するジグラのモチーフもこのミツクリザメです。
突き出した頭部の中には電気を感知する器官が入っており、
餌を探すレーダーの役割を果たします。

ここまでインパクトのあるミツクリザメですが、世界的に見ても捕獲例は少なく、わずか数十個体のみ。
しかも驚くべきことにその捕獲例のほとんどが日本に集中しているのです!
千葉県沖の東京海底谷で多くの幼体が見つかったこともあります。
そう、世界中のゴブリンシャークマニアにとっては日本こそが聖地なのです。逆にいえば世界に誇れる日本の名物、それがこのゴブリンシャークなのです。
(今回の特別展では剥製による展示になります。)
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イモリザメ学名:Parmaturus pilosus
英名:Salamander shark
最大長:64cm
原産地:太平洋・東シナ海(日本近海)、水深500~800m
この深海ザメは現在のところ日本近海でしか発見されていない固有種です。
サメの仲間にはカエルザメやら、ヤモリザメやら、様々な名前がありますが、
このサメはどの辺がイモリなんでしょうか?
英名のサラマンダーシャークも直訳すれば「サンショウウオザメ」ですから、
イメージはほぼ共通なんでしょうか・・・謎です。

大きい眼が特徴で、
深海のわずかな光を増幅して餌となる生物を探します。

薄暗い水槽のなかをヒュンヒュンと泳ぐ姿は、とにかくカッコいいの一言。

フラッシュなしの流し撮りに、何度も、

何度も、

何度もチャレンジしてしまいました。
うーん、美しい流線型。

このサメは肝臓の重さが体重の1/4ほどもあり、
そこには肝油成分のスクワレンが多く含まれています。
最近よく「深海鮫から抽出したサメ肝油」とかいって
健康サプリメントとして売られている、アレですね。

飼育難易度が高く、飼育例そのものも少ないサメ。
各種サメの飼育で有名な「アクアワールド・大洗」で長期飼育に挑戦中だそうですが、
それ以外の地で生きた姿を見ることができるのは大変貴重。
必見です。
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Deep Sea~深海の不思議な生きものたち~
09/03/20~09/05/10
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